【印西市】石場建ての家づくり。みんなで地固め「ヨイトマケ」ワークショップ
- 2025/12/21
現在、印西市で進めている伝統工法「石場建て」の家づくり。このプロジェクトで、先日、一つの大きな節目となる「よいとまけ(地固め)ワークショップ」を開催しました。
「石場建て」は、現代主流のコンクリート基礎を使わず、地面の上に置いた石の力で建物を支える、古民家と同じ知恵が詰まった工法です。そのため、石を支える「地面」をどれだけしっかり固められるかが、家全体の命運を握ります。今回は、その大切な土台づくりを、昔ながらの知恵を借りてみんなの手で行いました。
やぐらを組み、ケヤキの槌で地を叩く
現場には、この日のために三脚の立派な「やぐら」が組まれました。その中心に堂々と吊るされているのは、ケヤキの巨木から切り出された特製の巨大な木槌です。

作業の音頭を取ってくれるのは、川越市の綾部工務店・綾部社長と、若手大工の坂本さん。お二人の威勢の良い掛け声に合わせて、みんなで綱を引き、木槌を高く持ち上げては地面へと叩き落としていきます。
あいにくの曇り空で、時折小雨がパラつくお天気でしたが、現場の熱気はそんなものを吹き飛ばすほど!クライアントのご家族やご親戚、大工さんたち、さらには「伝統工法を肌で感じてみたい!」と手を挙げてくださったはじめての参加者まで、多様な顔ぶれが印西の地に集まりました。
40kgの重みを「分かち合う」伝統の知恵
この木槌、実は重さが40〜50kgもあります。一人で持ち上げるのは至難の業ですが、ここには先人の知恵が隠されています。やぐらに設置された滑車を通すことで、一人あたりにかかる荷重は実質6分の1程度にまで軽減されます。
動画で見ると「すごく大変そう……」に見えるかもしれませんが、実はコツを掴めば意外とスイスイ動かせます。大人から子供まで、みんなが同じリズムで綱を引けるのが、この「よいとまけ」の素晴らしいところ。
「ヨイショ!」で息を合わせて、大きな衝撃とともに地面が締まっていく感覚は、なんとも言えない爽快感があります。
足裏から伝わる、家と大地が繋がる瞬間
今の住宅現場では、大型の重機によって効率的に工事が進むのが一般的です。それは決して悪いことではありませんが、家づくりのプロセスがどこか遠く、見えにくい「ブラックボックス」のように感じてしまう側面もあります。
しかし、この「よいとまけ」には、自分たちの手で家を築いているという確かな身体感覚があります。
自分が今立っている地面を、自らの腕の力を使い、皆で声を掛け合いながら叩き固めていく。木槌が落ちるたびに生じる強烈な振動は、綱を介してダイレクトに腕へと響きます。
「今、この家が大地としっかり繋がった」
そう確信できる瞬間は、設計者である私にとっても、何物にも代えがたい感動です。ただの「地面」が、家族を守る「土台」へと変わっていく。その命を吹き込む作業に自分たちの手で参加しているという手応えを感じました。
雨混じりの空の下でしたが、大きな掛け声とともにみんなの心が一つになって、一打ちごとに大地の力が強くなっていく。そのダイナミックなリズムは、現場全体を清々しいエネルギーで満たしてくれました。
作業の合間に広がる「お喋り」の時間
とはいえ、もちろんずっと綱を引き続けるわけではありません(笑)。
合間にはみんなで輪になってお茶を飲み、ホッと一息つくお喋りタイムも。施主様と参加者の方が家づくりのこだわりについて盛り上がったり、この構法の基本的な部分について解説したりといった時間です。

効率だけを考えれば、重機を使えば一瞬の作業かもしれません。でも、こうして色々な人の手が加わり、たくさんの笑い声が響いた場所が家の土台になる。それだけで、これから建つ家がとても温かく、愛情深いものになる気がしております。
伝統工法というと「難しそう」「頑固そう」というイメージがあるかもしれませんが、本来はこうして人が集まり、助け合いながら進めていく、とても人間味あふれるものとなっています。関わっている人が多いだけに、この「手間」を楽しむ豊かな時間こそが、家づくりの本当の価値なのだと感じました。
丸一日作業を続けまして、だいたい1/3が終了しました。ヨイトマケは、引き続きワークショップ形式で開催を予定しています。ご興味のある方はぜひお問合せください!


















