雨落ちの作り方|瓦と石でつくる、有機土木の雨水浸透の仕組み
2026/10/15
雨を流すだけではなく、土を育てる雨落ち
秋晴れの一日、雨落ちづくりのワークショップを開催しました。
雨落ちとは、屋根の軒先から落ちる雨水を、建物の足元で受け止めるための仕組みです。雨どいで水を集めて流す方法とは違い、軒下に石や砂利を設け、雨粒の勢いを和らげたり、地面に水を浸透させたりします。
昔から日本の木造建築に見られる、雨との付き合い方のひとつです。

今回の雨落ちは、そこからさらに一歩踏み込んだもの。
水の通り道だけでなく、空気や有機物、菌や微生物の働きまで考えて、土中の環境を育てていこうという試みです。
背景にあるのは、千葉市の高田造園の高田宏臣さんが提唱する「有機土木」の考え方。
参加者のみなさんと、土を掘るところから実際に手を動かして学びました。
まずは溝を掘る
溝は壁が垂直になるように掘っていきます
ワークショップの作業は、軒先に沿って溝を掘るところから始まりました。
稲村さんから、雨水が落ちる位置や土の中での水と空気の動きについて解説を受けながら、スコップを手に作業を進めます。土を掘ると、地面の硬さや湿り具合、石の混ざり方など、場所によって違いがあることに気づきます。
雨落ちは、表面をきれいに仕上げれば完成というものではありません。むしろ、仕上げの下にどんな環境をつくるかが大切。今回は、完成後には見えなくなる下地づくりが学びの中心です。
下地が大切_焼杭をいれる
掘った溝には、およそ1.5m間隔で杭を入れていきます。
この杭には、縦方向の水の流れの循環を促すとともに、下地にかかる荷重を受け止める意味もあります。
雨落ちが、単なる石の敷き詰めではなく、地面の中まで考えた土木の仕事であることがわかります。
作業の一つひとつに理由があり、その理由を稲村さんが説明してくださいます。手を動かしながら聞くと、言葉だけでは想像しにくい土中の構造も、ぐっと身近に感じられました。
直径約30cmの竪穴は「菌のマンション」
さらに、溝の中に直径30cmほどの竪穴を掘ります。
その穴には、割栗石と、炭、落ち葉、藁などの有機物を入れていきます。石の隙間や、そこに組み合わされる自然素材が、菌や微生物のすみかとなることを目指しています。
こうした場所は、いわば「菌のマンション」。
土の中に、さまざまな生きものが暮らせる場所を用意する。雨が降ると水が入り、石の間には空気の通る隙間もある。有機物は土中の生きものたちの活動を支える素材にもなります。

すぐに目で確認できるものではありませんが、完成後の地面の下で何が起こるのかを想像しながらつくると、土を掘る作業の意味も変わってきます。
今回の雨落ちは、水を受ける設備であると同時に、小さな生態系の居場所づくりでもあるのです。
瓦を土留めに使う、仕上げ作業へ
溝掘りから下地づくりまでを体験したあとは、別の施工場所へ移動しました。
こちらは、稲村さんたちが事前に作業を進め、土留めの瓦まで据えてくださっていた場所。参加者は、その続きを仕上げていきます。

今回、溝の両側の土を留めるために使ったのは、新しい瓦です。連続して並ぶ瓦の線が、軒下の景色をすっきりと整えてくれます。
このころから気温も上がってきました。参加者のみなさん、10月でも汗をかく作業に熱心に取り組んでくださいました。
割栗石の間に、炭・藁・落ち葉を詰める
瓦で土留めされた溝の内側にも、割栗石を小端立てしていきます。
ごつごつした石は、大きさも形もそれぞれ。手で向きを変え、隙間を確かめながら納めていく作業には、自然素材ならではの面白さがあります。
ここでも、石だけで終わりにはしません。石の間に炭や藁、落ち葉などを詰めていきます。性質の異なる素材を組み合わせ、菌や微生物が育ちやすい、有機的なバランスの取れた環境を再現しようという工夫です。
そして最後に、仕上げの砂利を入れていきます。石を運ぶ人、隙間に素材を入れる人、仕上がりを整える人。参加者のみなさんの手によって、少しずつ軒下の風景が変わっていきました。
瓦の落ち着いた色合いと、石や砂利の自然な表情。仕上がった姿はシンプルですが、その下には、みんなで学びながら重ねた工程が隠れています。
出来上がった雨落ちの中では環境が整い、どんどん良い状態になっていくそうです
小さな雨落ちから、敷地の外へも広がる循環を
今回取り入れた有機土木の考え方では、雨水をただ速やかに排出するのではなく、水や空気、生きものの働きを生かして土地を整えていくことを大切にしています。
雨落ちの内部で菌が育ち、その働きが敷地内、さらに周囲の土地へと広がっていく。そんな健やかな土中環境を目指した設計です。
もちろん、土の状態や水の流れ、時間の経過によって変化するものなので、その効果を一度の施工だけで決めつけることはできません。これから雨が降り、季節が巡るなかで、どんな変化が生まれるのかも見ていきたいと思います。
雨の日、軒先から落ちる水の下では、私たちの目に見えない働きが続いている。そう考えると、いつもの雨の風景も、少し違って見えてきます。
建築が、土地をよくするきっかけになるように
私自身も、地球守・有機土木協会の正会員として、有機土木の考え方を学んでいます。
家を建てることは、建物だけをつくることではありません。敷地の土、水の流れ、庭の草木、そして周囲の環境にも関わる仕事です。
今後も、素材や職人の手仕事を大切にすることと同じように、建築が土地とどう付き合うかを考えていきたいと思っています。

深い軒が雨から建物を守り、その先の雨落ちが水を受け、土の中に小さな生きものの居場所をつくる。
建築と自然がつながる、ひとつの具体的な方法を体験できた一日でした。
作業に参加してくださったみなさま、丁寧に解説し準備を進めてくださった稲村さんはじめ木び土のみなさま、ありがとうございました!
今度は雨の日に、この雨落ちの様子を見てみたいですね。













